「界 加賀」で伝統工芸に触れながら、心ほどける癒しの時間を

金沢港を出発するクルーズ船でクルーズ旅をたっぷり満喫した後は、石川ならではの贅沢な時間を過ごしませんか? 山代温泉に佇む「界 加賀」は、加賀の伝統文化が詰まった、温まるおもてなしが魅力の宿。 美肌の湯とも称される温泉に浸かり、地元の旬をふんだんに使ったお料理をいただけば、旅の疲れもすっと溶けていきます。

今回は、SNS総フォロワー120万人を超えるトラベルインフルエンサー・トンちゃん が実際に宿泊し、「界 加賀」の魅力をたっぷり体験していただきました。ぜひ参考にしてみてくださいね。

山代温泉にある「界 加賀」とは


金沢駅から北陸新幹線で約20分。車窓に広がる田園風景を眺めながら、加賀温泉駅に到着。そこから車で12分、開湯1300年の歴史を誇る山代温泉へと足を運びます。

山代温泉は、与謝野晶子や泉鏡花、北大路魯山人といった文人墨客に愛され、温泉文化が息づく場所です。共同浴場「古総湯」を中心に広がる湯の曲輪(ゆのがわ)と呼ばれる街並みには、温泉宿や商店が軒を連ね、温泉地ならではの風情を感じられます。

そんな山代温泉に佇む「界 加賀」は、1624年創業の老舗旅館「白銀屋」の歴史を受け継ぎつつ、加賀の伝統文化と現代の感性が融合した温泉旅館。訪れるたびに、時代を超えて愛される加賀の美と癒しを存分に味わうことができます。


入口には、「白銀屋」時代の面影を今に伝える品々がひっそりと息づいています。人を集めるための合図や時刻を知らせる道具として使われた「魚板(ぎょばん)」や、当時の瓦。素朴ながらも力強いその存在感は、訪れる人の足を止め、そっと時を遡らせてくれます。

まず出迎えてくれるのは、伝統建築棟。江戸時代後期に建築された伝統建築棟は、国の登録有形文化財です。


フロントホールに一歩足を踏み入れると、目を引くのが、金物を一切使わず太い大黒柱や丸太梁を巧みに組み上げた「枠の内」の壮麗な造り。その力強い伝統建築の中に、ひときわ繊細で幻想的な存在感を放つのが、水引のアートです。


伝統建築棟から外回廊を進むと現れるトラベルライブラリー。ここは、陶芸家で美食家として名を馳せた北大路魯山人の足跡を感じることができる、心落ち着く空間です。

なかでも目を引くのは、魯山人が酔った勢いで書いたとされる「いろは屏風」。最後の三文字「ならん」が記されず、途中で終わったその書には、どこか奥ゆかしさと余白の美を感じさせます。

本棚には九谷焼や魯山人にまつわる本が並び、ページをめくるたびに加賀の文化や歴史がそっと心に語りかけてくるようです。香り高いコーヒーやハーブティーを片手に過ごす静かな時間は、旅の喧騒を忘れさせてくれるひととき。

加賀文化が息づく「ご当地部屋」


界 加賀の客室は全48室。ローベッドとソファが巧みに配置され、和の伝統美と現代の快適さが調和する洗練された空間が広がります。室内には、「九谷焼」「山中塗」「水引」「加賀友禅」といった石川・金沢エリアを代表する伝統工芸品がさりげなく飾られ、見つけるたびに嬉しい気持ちに。


障子には水引があしらわれ、繊細な結び目が上品に輝きを放ち、ベッドルームには、加賀友禅をモチーフにした雪吊りが描かれたパネルが飾られ、淡い色彩が心を和ませてくれます。


地元作家が手がけたオリジナルの九谷焼が息づいているのも魅力的。お部屋の鍵のキーホルダーや、客室の表札、そして茶器に至るまで、どれも九谷焼の繊細で華やかなデザインが施されています。


お部屋にそっと用意されたウェルカムスイーツは、加賀市の老舗和菓子屋「音羽堂」の銘菓「加賀紫雲石」。天皇陛下が皇太子時代に献上されたことでも知られる、特別なお菓子です。

丹波大納言の豊かな風味と希少な白の備中豆が、やわらかな寒天に包まれた一品は、上品な甘さとほろりとほどける絶妙な食感が魅力的。


お部屋に用意された「界オリジナル風呂敷」を持って、山代温泉にある共同浴場「古総湯」へ。「界オリジナル風呂敷」を提示すると、宿泊者は無料で入浴を楽しむことができます。

日本初、温泉旅館内の「金継ぎ工房」で金継ぎ体験


割れたり欠けたりした器を漆で埋めて修復し、最後に金や金属粉を施して仕上げる金継ぎ。

本来、金継ぎは完成までに最低でも1ヶ月を要する繊細な作業。漆を塗った後に「硬化」といって乾燥させる時間が必要で、1度の作業で仕上げることはできません。


体験では、実際に界 加賀で使われていた器を使い、欠けた部分を漆で埋める作業や、最後に金粉を施す仕上げの工程を体験できます。その日の器の状態によってどちらの作業になるかは異なりますが、どちらも金継ぎの奥深さを感じられるひとときです。


修復された器は、界 加賀の夕食や朝食で実際に使われ、金継ぎによって生まれ変わった美しい姿で食卓を彩ります。ゲストがリレーのように金継ぎをつなぎ、器が代々受け継がれていく姿は、まるで器と人が共に歴史を紡いでいるかのよう。その温かな物語に、心がじんわりと満たされます。

器と料理のマリアージュが楽しめる会席料理


全10品からなる「のどぐろと鮑の特別会席」。界 加賀が誇るこの会席料理は、「器は料理の着物」と語った北大路魯山人の思想を受け継ぎ、旬の食材と器の美しさが見事に調和した一品一品が並びます。

特別会席の最初に供される先付けは、界 加賀ならではのご当地らしさを感じる一品。九谷焼の美しい器に盛り付けられた料理はもちろんのこと、花器に生けられた一輪の生花までもがテーブルに並び、テーブル全体を華やかに演出してくれます。


メインを飾るのは「鮑の若布包み蒸し」。肉厚のアワビをわかめで丁寧に包み込み、せいろでふっくらと蒸し上げた一品です。さらに、もうひとつの主役は「ノドグロの土鍋ご飯」。ご飯に脂ののったノドグロの旨味がじんわりと染みわたり、ひと口ごとに幸せが広がる美味しさです。口の中でほろりとほどける絶妙な味わいに、お箸が止まりません……。

当地楽「加賀獅子舞」を鑑賞


夕食をいただいた後は、待ちに待った「加賀獅子舞」の時間です。

スタッフが披露するこの舞は、八方睨(はっぽうにらみ)と呼ばれる迫力ある獅子頭を用い、振り付けから音楽まですべてオリジナル。その力強い太鼓の響きが体にまで伝わり、駆け巡る獅子のダイナミックな動きに、観客全員が心を奪われます。

舞の後には、獅子と一緒に記念写真を撮る時間も。加賀の伝統文化に触れるだけでなく、その感動を形に残せるこのひとときは、旅の思い出をさらに華やかなものにしてくれました。

1日4組限定「べんがらラウンジ」で特別なひとときを


2024年3月に新たにオープンした「べんがらラウンジ」。紅殻色が美しい伝統建築の中、「湯の曲輪」を一望できるこのラウンジは、1日4組限定の特別な空間です。

九谷焼や山中塗など、約100種類の器がずらりと並び、どれも個性が光るものばかり。かわいすぎる酒器や器を前に大興奮。どれを選ぼうか迷いに迷ってしまうのも楽しい時間でした。


お気に入りの器を選んだら、次はメニュー選び。北陸地方の日本酒を含むアルコール1種類と、地元食材を使ったピンチョスやおつまみ1品を選ぶことができます。

選んだ器に料理が盛り付けられると、器の表情がさらに引き立ち、新たな魅力が感じられるのも嬉しいポイント。料理の色合いや質感が器の個性を美しく際立たせ、器と食材が織りなす調和が、目にも心にも豊かなひとときを届けてくれました。

九谷焼のアートパネルを楽しめる大浴場


界 加賀の大浴場に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは、加賀の春夏秋冬を描いた九谷焼のアートパネル。湯船に浸かりながら眺めるその景色は、まるで四季が一枚の絵画に閉じ込められたような美しさです。

パネルには九谷焼の特徴である九谷五彩である、紺青、赤、紫、緑、黄がふんだんに使われ、鮮やかな色彩が湯気に包まれて優しく輝いていました。男湯・女湯合わせて8人の九谷焼作家が自由な発想でデザインしたそれぞれの作品は、個性が際立ち、じっくり眺めているだけでも心が和みます。


露天風呂と内風呂を隔てる仕切りガラスには、金沢箔(金箔)で描かれた白山が輝きます。その豪華さと繊細さが絶妙に調和したアートは、湯船に浸かりながら眺めるだけで特別な気分に。

朝と夜、異なる表情を見せる白山の美しさに魅了されるひとときは、まさに旅の贅沢そのものでした。ぜひ、朝晩両方の時間に入浴して、その違いを味わってみてください。

石川県の郷土食材を楽しめる「ご当地朝食」


界 加賀で迎える朝は、石川県の郷土食材をふんだんに使った和食膳から始まります。目を引くのは、九谷焼のかわいらしい器に盛り付けられた彩り豊かな料理たち。

メインは、石川県伝統の魚醤をベースにした「いしる鍋」。海の幸と新鮮な野菜がたっぷり入ったお鍋からは、いしる特有の豊かな旨味がしみわたり、一口いただくだけで体がじんわりと温まります。

ふわふわの出汁巻き玉子や、旬の魚を使った焼き魚、白米にお味噌汁といった和食ならではの温かな味わいも揃い、朝から心までほぐれるようなひととき。一つ一つが石川の恵みを感じられる品々で、一日のエネルギーをたっぷりとチャージすることができました。

茶室「思惟庵」で楽しむ茶の湯文化


チェックアウト前にぜひ体験したいのが、魯山人ゆかりの茶室「思惟庵」で行われる「茶の湯体験」。

かつて離れの客室として使われていたこの特別な空間では、大樋焼の茶碗でいただくお抹茶と、地元の老舗和菓子店「しもつね」が手掛けた季節を映す上生菓子を楽しむことができます。


静寂の中で感覚が研ぎ澄まされるような茶の湯体験は、旅の疲れをそっと和らげ、日本の茶の湯文化と加賀の情緒を存分に味わえる特別なひととき。旅の締めくくりにふさわしい、贅沢な時間がここにはありました。

金沢発着クルーズで非日常の海の旅を楽しんだ後は、山代温泉で体と心を癒し、加賀文化に触れるひとときを。次の旅には、クルーズと「界 加賀」での滞在を組み合わせ、石川ならではの文化や自然、心地よいおもてなしを存分に堪能してみてはいかがでしょうか。

取材:トンちゃん
執筆:土屋香奈
取材協力:一般社団法人金沢港振興協会
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