美食の「にっぽん丸」へ。神戸から金沢へ、海の上で過ごす3日間のご褒美時間

こんにちは。トラベルフォトライターの土屋香奈です。

今年引退が決まっている“美食の船”「にっぽん丸」に、2025年6月、神戸から金沢へ向かう3日間のクルーズで乗船してきました。

今回の航路は、神戸を出港し、1日たっぷりと航海日を楽しんだあと、金沢へ到着する片道クルーズ。海の上でゆったりと過ごしながら金沢へ近づいていくこの旅には、飛行機や新幹線で向かうのとは違う特別感がありました。

たった3日間。
けれどその時間のなかには、おいしい食事も、海を眺める贅沢も、船で過ごすからこそ出会える非日常も、ぎゅっと詰まっていて。旅を終えるころには、思っていた以上に心が満たされていました。

長く愛されてきた“美食の船”「にっぽん丸」


「にっぽん丸」は、長く“美食の船”として親しまれてきた日本船です。

実際に乗ってみて感じたのは、ただ料理がおいしいというだけではない、そのおいしさをゆっくり味わいたくなる空気が、船全体に流れていることでした。上質なのに、どこかあたたかい。その心地よさが、にっぽん丸らしさなのだと思います。

シャンパン片手に出港

19時、にっぽん丸は神戸港を出港。
出港時には旗が配られ、みんなで手を振りながら船出を見送る時間も、この旅の楽しみのひとつでした。


4階のプロムナードデッキでは、無料のシャンパンサービスも。


演奏が響くなか、シャンパンを片手に少しずつ港が遠ざかっていくのを眺めていると、それだけで気持ちがふわりと非日常へ切り替わっていきます。

「コンフォートステート」で過ごす、ちょうどいい心地よさ

「にっぽん丸」の客室は全室オーシャンビューで、窓から海を眺められるのが魅力です。


今回宿泊したのは窓のある「コンフォートステート」。


シングルベッド2台にコーナーソファも備えられていて、思った以上に快適。シンプルで落ち着きのある空間で、船旅のあいだを心地よく過ごせました。


アメニティは歯ブラシやシェービング用品などひと通り揃っていて、冷蔵庫にはお水も用意されています。


さらに、お部屋には「東京ミルクチーズ工場 ソルト&カマンベールクッキー」とのどあめも。こうしたちょっとした心配りがあるのもうれしいポイントでした。


そして今回のお部屋の冷蔵庫に入っていてうれしかったのが、石川県の新しいスイーツ「ツキトワ」のBAUM KUTANIでした。食べる九谷焼という発想もおもしろく、石川らしさを感じられるひと品です。にっぽん丸は、こうしてその土地らしさにふれられるところも魅力のひとつ。お部屋でほっとひと息つきながら、さりげなく石川を感じられたのもうれしかったです。


バスルームはシャワー、洗面台、トイレがコンパクトにまとまったつくり。シャンプー類もそれぞれ用意されており、必要なものがしっかり整っていて、不自由なく過ごせる客室です。

「にっぽん丸」で味わう、美食のひととき

メインダイニング「瑞穂」


海の豊穣を描いた信楽製の大陶板画がひときわ目を引く、メインダイニング「瑞穂」。にっぽん丸の食の時間を象徴するような場所で、朝昼夜、それぞれに違う表情を見せてくれました。

朝食

朝食では、和食のお膳とビュッフェを楽しめます。

朝からお味噌汁と白ごはんをいただけるのは、やっぱりほっとするもの。

和食を選んでもビュッフェを利用できるので、きちんと朝ごはんをいただきながら、気になるメニューを少しずつ味わえるのもうれしいポイントです。

ビュッフェには、伝統のにっぽん丸ビーフカレーも。

昼食


昼食もまた、にっぽん丸らしい丁寧なおいしさを感じる内容でした。


この日は、とろろ蕎麦、和牛コロッケ、鶏肉の柚子胡椒焼き、白滝と人参の真砂和え、夏みかんとわかめの混ぜご飯、香の物、わらび餅という献立。和を感じる料理が並び、昼の食事でありながら、きちんと一食としての満足感がありました。

重たすぎず、それでいて物足りなさもない。その絶妙なバランスにも、食の船として愛されてきた理由を感じます。

夕食


初日の夕食は和食懐石。
前菜、お造り、揚げ物、煮物、お食事、留椀、香の物、デザートと続いていく流れのなかで、少しずつ空の色が夜へと移り変わっていくのを眺めながらいただく時間は、本当に贅沢でした。


船の上にいるはずなのに、どこか静かな料亭にいるような気持ちになるほど落ち着いていて、ひと皿ごとにゆっくり味わいたくなります。海の上で、こんなふうに本格的な和食と向き合えることにも感動しました。

2日目の夜は、洋食のフルコース。


前菜から始まり、スープ、パン、魚料理、シャーベット、肉料理、デザートへと続く構成で、コースが進むほどに気持ちも高まっていきます。


なかでも忘れられないのが、にっぽん丸の名物「黒毛和牛ローストビーフ」です。ひと口頬張ると、濃厚な旨みがじゅわっと広がり、やわらかくとろけるような食感にうっとり。思わず笑みがこぼれるおいしさで、何度も食べたくなるという声が多いのも納得でした。おいしいものは、どうしてこんなにも一瞬でなくなってしまうのだろう……。そんなことを思いながら、気づけばあっという間にぺろりと完食していました。

夜食(ナイトスナック)

22時半からの1時間は、ナイトスナックの時間。日本茶やウーロン茶、ジュースなどは無料で楽しめます。


1日目は、漬物やどら焼き、フルーツなど。


2日目は、にっぽん丸オリジナル味噌ラーメンをはじめ、中華粽、香の物、レモン葛餅、フルーツが並んでいました。

もう十分食べたはずなのに、夜になると、こういうものが不思議と入ってしまうから困ります。少しだけ背徳感を覚えながら、その日に見た景色や食べたものを振り返って語り合う時間まで含めて、にっぽん丸の夜の楽しみでした。

オーシャンダイニング春日

夕食はスイートルーム、デラックスルーム宿泊者の優先ダイニングとなる「オーシャンダイニング春日」。朝食・昼食は客室タイプに関わらず利用できます。

朝食

7時50分頃にはすでに14組29名ほどが並んでいて、8時20分頃にようやく入れたほどの人気ぶり。


朝食では、パンケーキがおすすめメニューに。卵料理は4種類から選べ、できたてを用意してもらえます。さらに、ソーセージやベーコンなどのグリル系に、本日のスープもいただきました。


クラシックが静かに流れる空間は、朝の時間にふさわしい上品さがあって、少しだけ背筋が伸びるような気分に。にっぽん丸らしい丸い窓の向こうに海を眺めながら迎える朝は、それだけで格別でした。

リドテラス


プールサイドにある「リドテラス」は、海を感じながら軽食やドリンクを楽しめる、つい何度も立ち寄りたくなる場所でした。風が気持ちよくて、デッキで過ごす時間をより特別なものにしてくれる存在です。


リドテラスに立ち寄ると、なんだかんだ手が伸びてしまうのがGODIVAの「ショコリキサー」。こういうちょっといいものを追加料金なしで楽しめるのは、やっぱりうれしい。3日間で5杯は飲みたいと思っていたのに、結局は3杯……。でも、その3杯でしっかり満たされてしまうあたり、私には十分すぎるご褒美でした。


軽食も日替わりで用意されていて、1日目は「にっぽん丸特製ハンバーガー」と「メキシカンタコス」、「椎茸と冬瓜の中華スープ」。


2日目は「にっぽん丸特製ハンバーガー」、「黒豚ソーセージホットドッグ」、「紅いものポタージュ」が並び、どれも気軽に楽しめるのに、ちゃんとおいしい。デッキで海を眺めながら頬張ると、それだけで船旅らしさがぐっと深まります。


ドリンクも充実していて、フリーで楽しめるメニューの中には「サッポロ黒ラベル」の生ビールも。ビール党の私には、かなりうれしいサービスでした。ほかにも、りんごジュースやみかんジュース、黒ウーロン茶、ダージリンティーなどが揃っていて、そのときの気分に合わせて選べるのも魅力です。

ラウンジ「海」

モーニングコーヒー&ティー、アフタヌーンティーの会場にもなる「ラウンジ海」。食事とはまた違う角度から、にっぽん丸の豊かさを感じさせてくれる場所でした。


「レコードアワー」の時間には、好きなレコードを1曲ずつリクエストすることも。レコードは700枚ほどあるそうで、映画音楽やジャズ、歌謡曲、ワールドミュージックまで幅広いラインナップが揃っています。普段レコードに触れる機会はほとんどないので、その時間そのものが新鮮で、優雅でした。

アフタヌーンティーの時間には、本日のドリンクとお菓子を。この日は、セイロン・キャンディ、グレナダ、ブレンドコーヒー、エスプレッソから選ぶことができ、お菓子はチョコロールとコーヒーペカンクッキーでした。

何かを「しなければ」ではなく、ただ海を眺めながらお茶を飲む……。そんな静かな時間まできちんと心地いいところにも、にっぽん丸らしさがありました。

ホライズンラウンジ


船首に位置するラウンジは、180度の大きな窓に囲まれた眺望が魅力。朝はモーニングコーヒー&ティーが用意され、パンやドリンクを楽しめました。

旅の思い出をやさしく彩る船内イベント

ビンゴゲーム


三井オーシャンクルーズのオリジナルグッズが当たるビンゴゲームも、船内での楽しみのひとつでした。にっぽん丸のビンゴは、紙ではなく繰り返し使うボード式カードを使うのが特徴で、それもまた特別感があります。


景品を狙う時間というより、船内みんなでひとつになって盛り上がるお楽しみイベントという雰囲気。スタッフの余興に笑い、番号が呼ばれるたびに一喜一憂し、誰かがビンゴになるたびに自然と拍手が広がります。そんなあたたかな空気も含めて、にっぽん丸らしい思い出のひとつになりました。

能登上布の講演と工程実演にふれる特別な時間


今回は特別に、能登復興にまつわるイベントも用意されていました。


約2000年前から受け継がれ、石川県指定無形文化財にも登録されている「能登上布」についてのトークイベントに加え、日本で唯一「能登上布」を織る山崎麻織物工房の四代目織元による手染め工程のデモンストレーションも。ものづくりの背景と技の両方にふれられる、ぜいたくな内容です。

能登上布は、金沢のお店で見かけるたび、ずっと気になっていた存在でした。


麻織物と聞くと素朴な印象もありますが、能登上布は、伝統を大切にしながらも、今の装いにも自然になじむ洗練された魅力があります。そのさりげないおしゃれさが印象的で、以前から心に残っていました。


だからこそ、今回こうして実際に話を聞き、工程を間近で見られたことがうれしくて。受け継がれてきた技の意味や、ひとつひとつの手しごとに宿る丁寧さにふれるうちに、ただ「気になっていたもの」が、ぐっと輪郭を持って迫ってくるような感覚がありました。

ずっと惹かれていたものに、ようやくきちんと出会えた。そんな実感が残る、私にとって特別な時間でした。

クルーズ船で楽しむお風呂時間


今回のお部屋はシャワーだけだったので、グランドバスの存在がかなりありがたく感じました。足を伸ばしてゆっくりお湯につかれるのは、日本船ならではの魅力。


サウナまであるのがうれしくて、お風呂の時間がより充実したものになりました。

金沢港に入港


朝食を食べ終えた8時半頃、窓の向こうに金沢港クルーズターミナルが見えてきました。神戸を出てから、船の上で食事を楽しんだり、海を眺めたり、ゆっくり時間を過ごしてきたはずなのに、気づけばもう金沢。
その感覚がなんとも不思議で、でも飛行機や新幹線で帰ってくるのとはまったく違う、やわらかな到着でした。

少しずつ見慣れた景色が近づいてくると、ほっとするような安心感と、旅が終わってしまうさみしさが静かに重なります。移動してきたというより、海の上の時間を味わいながら、その延長で金沢に帰ってきた。そんなふうに感じる入港でした。

下船後も、金沢らしさを楽しむ


下船して金沢港クルーズターミナルに入ると、船内でも出会った能登上布や九谷焼など、金沢らしいおみやげが並んでいました。


ずっと気になっていた能登上布のイヤリングはピアスのみの展開だったので、イヤリングでオーダーすることに。


九谷焼のマグネットも見つけて、そのかわいさに自然と手が伸びてしまいました。

「にっぽん丸」から、次の船旅へ


ただ食事がおいしいだけではなく、そのおいしさを引き立てるやわらかな空気が船全体に流れていること。それこそが、にっぽん丸らしさなのだと、あらためて感じた3日間でした。

そんなにっぽん丸は、2026年5月10日に横浜へ帰着するクルーズをもって引退します。長く愛されてきた“美食の船”が、その歴史に幕を下ろすと思うと、やっぱりさみしさは大きくて……。この船で過ごせる時間の尊さを、あらためて感じずにはいられません。

その一方で、金沢港には新しい楽しみも待っています。2026年10月19日出発・10月22日帰着で、「三井オーシャンサクラ」の[金沢発着]デビュークルーズ ~隠岐・壱岐~ が予定されています。

「にっぽん丸」を見送るさみしさはありながらも、金沢港からまた新しい船旅が始まっていくと思うと、どこか救われるような気持ちにもなります。「にっぽん丸」がくれた豊かな時間の記憶を胸に、次は「三井オーシャンサクラ」が金沢港から連れていってくれる新しい景色にも、そっと期待したくなりました。

[金沢発着]三井オーシャンサクラ デビュークルーズ ~隠岐・壱岐~
2026/10/19(月) – 2026/10/22(木) 3泊4日
【お問い合わせ】
詳細や空き状況は最寄りの旅行会社か以下、MITSUI OCEAN CRUISES クルーズデスクに個別にお問い合わせください。
0120-791-211 携帯電話から03-4446-7532 平 日10:30~17:00/土曜・日曜・祝日休
※予約はお申し込みを確定するものではありません。受付後、空室状況を弊社担当者よりご連絡します。※諸事情により営業時間が変更となる場合があります。

取材協力:一般社団法人金沢港振興協会

メンバープロフィール

土屋香奈
土屋香奈
大学時代に観光を学び、旅を発信する楽しさを覚える。現在は、女子旅メインとしたトラベルフォトライターとして活動。その他にも編集者、フォトグラファー、インフルエンサーなど多岐に渡り活動中。地元金沢では、いしかわ観光特使を委嘱。SNS講座やトラベルライターの講師なども務める。旅番組のテレビ出演も多数。クルーズにハマったきっかけは、取材で海外発着のクルーズに行ったこと。



取材のお問合せは下記アドレスまで

admin@cruise-ism.com

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