リバークルーズと聞くと、ヨーロッパのドナウ川やライン川を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
今回、私が乗船したのは、中国・長江を航行するリバークルーズです。
出発前は「三峡の美しい景色を眺める船旅」という程度のイメージしか持っていませんでした。しかし実際に体験してみると、三国志の歴史、大迫力の水上ショー、切り立った峡谷の絶景、種類豊富な中国料理、そして心のこもったクルーのサービスまで、想像をはるかに超える旅でした。
数多くのクルーズ船に乗り、ラグジュアリー船でクルーとして働いてきた私にとっても、新しい驚きの連続だった長江クルーズ。その魅力と、乗船前に知っておきたいポイントをご紹介します。
5泊6日でも楽しめる長江クルーズ
今回の旅行は、重慶でのホテル宿泊を含めた5泊6日。クルーズ自体は、重慶から宜昌までを航行する3泊4日でした。
飛行機の時間をうまく組み合わせれば4泊5日程度でも参加できますが、重慶で前泊する日程がおすすめです。飛行機の遅延で乗船に間に合わなくなるリスクを減らせるだけでなく、重慶の観光も楽しめるからです。
重慶では、黄金色にライトアップされた巨大建築群「洪崖洞」や、モノレールがマンションの中を通り抜ける「李子壩」、古い街並みが残る「磁器口」などを訪れました。
名物の火鍋も含め、乗船前から中国らしい景色や食文化を満喫できます。



最新のリバークルーズ船「センチュリー・ボイジャー」
今回乗船した「センチュリー・ボイジャー」は、2024年9月に就航した、長江の新世代ラグジュアリー客船です。
リバークルーズ船でありながら総トン数は約1万5,000トン、船内は7デッキという大きさ。一般的な小型の川船とは異なり、ゆったりとした船内空間が広がっていました。
料金は基本的にオールインクルーシブで、船内での食事や指定されたドリンク(ワイン、ビール、ソフトドリンクは飲み放題)、寄港地観光が含まれています。
乗船当日の夜、船はきらびやかな重慶の夜景に囲まれながら出港しました。サンデッキではライブミュージックが流れ、キャプテンやシニアオフィサーによる挨拶と乾杯も行われます。
高層ビルや巨大な建築物の明かりが長江の水面に映る景色はとても華やかで、これまで数多く見てきた出港風景の中でも、特に印象に残るものでした。


私が宿泊したエグゼクティブスイートは約38平方メートル。バスルームにはダブルシンクとレインシャワーがあり、歯ブラシを含むアメニティーも揃っていました。
客室には日本と同じタイプAのコンセントがあり、ベッドサイドにはタイプCとUSBの差し込み口もあります。最新の船らしく、充電環境も使いやすく設計されていました。





無料ランドリーが便利
エグゼクティブクラスで特に便利だったのが、無料のランドリーサービスです。
昼の12時までに洋服を出すと、その日の夜には仕上がって戻ってきました。畳んで返却してもらうか、ハンガーに掛けてもらうかも選べます。
私は5泊6日の旅行に4セットほどの洋服を持参しましたが、毎日ランドリーを利用できたため、実際にはさらに荷物を減らせたと思います。ちなみに、船内には無料で使えるランドリールームもあり、洗剤なども完備されているので、ご自身で洗濯することも可能です。


中華を中心とした種類豊富な食事
船内の食事は、基本的にビュッフェスタイルです。
料理は中華が中心ですが、ライブキッチンの麺料理、パン、お粥、サラダ、デザートなど、想像以上に選択肢が豊富でした。日によってはフカヒレスープが並ぶこともあります。
中華料理を毎日食べることが心配な方でも、パンやお粥なども選べるため、食事に困ることは少ないでしょう。
別料金で火鍋や中国料理のコース、イタリアンのコースランチなども楽しめます。






長江クルーズで印象に残った3つの体験
三国志の水上ショー「烽煙三国」
忠県で鑑賞した「烽煙三国」は、クルーズで稀にしか見えない大型実景アリルショー(オプショナルツアー/追加費用なし)で、ぜひ見てほしいです。
観客席自体が180度回転し、300人を超える出演者と約50頭の馬が目の前を駆け抜けます。広大な水上舞台を使った演出は非常にダイナミックで、一般的な船内ショーとはまったく異なる迫力がありました。
物語の中心は、三国志の英雄・関羽です。
ショーへの理解と感動が大きく変わりますので、三国志は”桃園の誓い”からの簡単な歴史の流れと、関羽、劉備、曹操、諸葛孔明の関係を予習しておくことを強くお勧めします!



三国志の歴史が残る白帝城
白帝城は、劉備が最期を迎え、国と息子の将来を諸葛孔明に託したとされる場所です。
前日に水上ショーを見ていたこともあり、実際にその歴史の舞台に立つと胸が熱くなりました。
白帝城から見下ろせる「※夔門(きもん) 」の風景は、中国の10元札の裏面にも描かれています。10元札を持参して、本物の景色と一緒に撮影するのもおすすめです。
※夔門(きもん)は、長江三峡の入口にあたる、両岸の切り立った山々に挟まれた峡谷です。
ただし、白帝城までは300段あまりの階段があります。歩くことが難しい方には、有料で人力の駕籠で上まで運んでもらうサービスも用意されていました。



最も感動した神女渓
今回の旅で私が最も感動した場所は「神女渓」です。
クルーズ船から小さなボートに乗り換え、約1時間かけて渓谷の奥へ進みます。進むほど川幅が狭くなり、両側の断崖絶壁がすぐ近くまで迫ってきます。他の観光地のような長い階段がないため、比較的参加しやすいツアーなのも魅力です。
ツアーの最後には、地元のガイドが船上で歌を披露してくれました。雄大な自然の中に響く美しい歌声は、鳥肌が立つほど素晴らしく、忘れられない時間になりました。


船の上から楽しむ三峡の絶景
神女渓だけでなく、客船で三峡を航行する時間そのものも、この旅の大きな魅力です。
船が瞿塘峡や巫峡へ入ると、両岸にそびえる山々が次々と現れ、自然の美しさと偉大さに圧倒されます。
私のおすすめは、最上階のオープンデッキです。前方では視界を遮るものなく峡谷を眺められ、後方には屋根のある日陰やソファもあります。また、李白に扮したダンサーの方が大自然をバックグラウンドにダンスも披露してくださいました!
冷たい飲み物を片手に、休憩しながら景色を楽しめるのもクルーズならではでした。




船を通り抜けて下船するリバークルーズならではの体験
長江のリバークルーズで驚いたのが、寄港地での接岸方法です。
大きなクルーズターミナルがない場所では、先に停泊している船の横に、別の船がぴったりと並びます。場合によっては、隣の船の船内を通り抜けて桟橋へ向かうこともあります。
船同士がぴったりと並ぶと、向かい合うベランダの乗客同士が手を伸ばせば握手できるほどの近さになります。オーシャンクルーズではなかなか見られない、リバークルーズならではの珍しい光景でした。
寄港地への到着時刻が近づいたら、客室の窓やデッキから外を確認するのも楽しみの一つです。


クルーの温かいサービス
このクルーズで、景色と同じくらい心に残ったのがクルーのホスピタリティーです。
友人がビュッフェで「スイカジュースはありませんか」と尋ねると、メニューにはないにもかかわらず特別に用意してくれました。
朝食時間を間違えた友人には、パンを箱に詰めて持たせてくれたこともあります。
正式なルームサービスはありませんが、ビュッフェの料理を客室に持ち帰る際には、クルーが部屋まで運ぶのを手伝ってくれました。
マニュアル通りに対応するのではなく、「目の前のゲストのために何ができるか」を考えてくれる温かさが伝わってきます。
乗客数が比較的少ないリバークルーズだからこそ、ゲストとクルーの距離が近いことも魅力です。

乗船前に準備したいもの
長江クルーズを快適に楽しむには、中国ならではの準備も必要です。
まず、支払いと連絡に便利な「WeChat」です。中国ではQRコード決済が広く普及しており、今回の旅行でもWeChat Payを使用しました。出発前にアプリを入れ、クレジットカードを登録しておくと安心です。
中国ではインターネットの利用に制限があり、LINEやGoogle、Instagramなどを通常どおり使えない場合があります。現地で困らないよう、中国でも利用できるeSIMやポケットWi-Fiを、出発前に準備しておくことをおすすめします。
また、中国の国内線では、CCC認証マークの付いていないモバイルバッテリーを持ち込めない場合があります。国内線を利用する場合は、製品に認証表示があるか確認が必要です。
そのほか、観光地によってはトイレットペーパーが置かれていないことがあるため、水に流せるポケットティッシュも持参すると安心です。
階段の多い観光地もあるので、歩きやすい靴、夏は帽子、日焼け止めも欠かせません。
日本から近い、想像以上に壮大な船旅
長江クルーズには、通信や決済、国内線の手荷物ルールなど、日本やヨーロッパへの旅行とは異なる準備が必要です。
観光地では長い階段を歩いたり、暑さに体力を奪われたりする場面もありました。それでも、そうした小さなハードルを大きく上回る体験がこの旅にはあります。
峡谷の圧倒的なスケール、三国志の歴史、水上ショー、種類豊富な食事、そしてクルーの心温まるサービス。
日本から数時間で訪れることができ、5泊6日ほどでも、これほど非日常的なリバークルーズを楽しめることに驚きました。
三国志を少し予習し、歩きやすい靴と帽子を用意し、WeChatと通信環境を整えておけば、長江の景色と歴史をより深く楽しめるはずです。

私自身、「世界には、まだこんなに面白いクルーズがあったのか」と、久しぶりに新鮮な驚きを感じました。
ヨーロッパとはひと味違うリバークルーズを体験したい方は、次の船旅の候補に中国・長江を加えてみてはいかがでしょうか。
取材協力:センチュリークルーズ
メンバープロフィール

- バンクーバーに語学留学中に、港に停泊していた大型クルーズ客船を見て、クルーになることを夢見る。その後客船クルーとして8年以上働き、訪れた国は90ヶ国以上。現在は、船で出会ったブラジル人の夫と共に世界中を転々とするノマド生活中。各地でクルーズ客船に乗船しながら、客船クルーの視点からクルーズの情報をYouTubeを中心にSNSで発信しています。
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