杉浦仁志エグゼクティブシェフ × クルーズ

『気になるあの方へ インタビュー企画』
初回のスペシャルゲストは、ONODERA GROUP エグゼクティブシェフの杉浦仁志さんです!

ONODERA GROUPは、フードサービス事業を主軸に多彩な事業をグローバルに展開し、特に外食事業の銀座おのでらは、世界5地域13店舗を運営、ミシュランの星も獲得し世界的にも有名です。

杉浦シェフは多数の受賞歴を持ち、海外で培った国際的な食の経験を通じ、現在は日本におけるヴィーガン・プラントベース調理の第一人者としてもご活躍されています。

撮影者:izumin

それでは、早速いってみましょう!

クルーズとの関わり

船上ゲストシェフとして10年程前にロイヤルカリビアンクルーズにアメリカで乗船、2019年にはMSCクルーズの視察にドバイでも乗船されています。

ゲストシェフ以外でも、ホーランドアメリカラインが日本に寄港した際の乗船試食会や、ダイナースクラブのプレミアム銀座ラウンジで、貴重な料理を振る舞っていただきながらクルーズトークショーを行ったこともありました。

その際、「次回は船内で料理教室ができれば良いですね~」なんてお話しもでてましたが、今ではすっかりご活躍されて、様々な外国船のクルーズ会社と関わりのある才能に溢れた類まれなシェフです!

クルーズとの出会いは?

杉浦シェフ:アメリカで仕事をしていた時に、ロイヤルカリビアンのクルーズ船上の和食 ”IZUMI” の立ち上げコンサルティングをしていた友人に、クルーズ船での仕事を紹介していただいたのが最初のご縁です。

圧倒的なスケールから学んだ船旅の世界

杉浦シェフ:初めて壮大なスケールの船に乗った時の印象は今でも覚えていて、異空間に自分の身を置くこと自体、特別感を感じていました。
船内が広すぎてお部屋に辿り着けなかったり(笑)

インタビュアー:クルーズ船では、あるあるですね(笑)

杉浦シェフ:レストランのオペレーションはスタッフ同士みんな仲良く団結し、システムから何から何まで、日本にない壮大な規模のスケールが大きい中で、お客様をもてなすことを学ばせていただきました。

インタビュアー:洋上のレストランや厨房の規模は、ものすごく大きいですよね。

杉浦シェフ:しっかりとしたクオリティで料理を提供できるオペレーティングは、経験の中で確立されているなと感じましたね。

クルーズ船のゲストシェフとしての経験

世界最大級の大型船 ロイヤルカリビアンクルーズ と、世界No.1の海運会社 MSCクルーズ からお声が掛かっているのは凄いことです。

(昨今の情勢で延期となっていますが)MSCクルーズが運航する船の一つ、MSCベリッシマの日本発着クルーズの一部料理の監修に携わっています。

シェフから見たクルーズ船の厨房は?

杉浦シェフ:幸いにもクルーズ船に乗る前に、アメリカのレストランで勤務していた際、3,000人規模のケータリングシステムの仕事をする機会があり、その時にスケールの大きさを感じていました。

クルーズ船の中でも同様にきちんと仕組み化されていて、なお且つ、より細分化されたシステムができているのだろうな、と思ってましたね。

インタビュアー:クルーズ船の仕事は未知の世界だと思いますが、大規模な仕事を経験されたことがあったから、不安も少なかったということですかね?

杉浦シェフ:そうですね。初めての大規模な仕事がクルーズ船上だったら、何から手をつけて、どういう風にオペレーションするのか分からず、ハードルが上がり恐縮していたかもしれないです。

しかし、そこでも各セクションのシェフがきっちり管理をしているというところと、各スタッフがそれぞれ自分の仕事に対して、プロフェッショナル意識を持って “自分の持ち場は自分で守る” そういった連帯のチームワークが重要だということを改めて学ばさせてもらいました。

船上での仕事はコンディションも大事

杉浦シェフ:エグゼクティブのシェフは、朝食と夕食と両方のオペレーションを見るために、一日の中で日によって二交代制で勤務をしています。

インタビュアー:大体ルーティーンが決まっているのですね。

杉浦シェフ:スタッフのコンディションも時間によってあまり変わらないようにするために、基本的にはルーティーンの流れは一緒になっていますね。
みなさんが無理なく無駄なく働いている印象を受けました。

ホスピタリティ お客様満足度の追求

杉浦シェフ:船内は特にいろんな国籍のお客様が乗船する中で、それに対応できるシステムが地上のレストランよりもきちんとあるイメージでした。

海外では当たり前ですが「ベジタリアン」「ヴィーガン」「ハラール」など、それぞれに向けた配慮が常にされています。

わざわざサービスを伺わなくても、メニュー見てすぐに把握できるようガイドラインがあります。

あとは苦手な食材があったとしても、それをきちんと管理して提供する、“お客様を思って提供する ということは、どこよりも船っていうのは意識されていて、ホスピタリティの高さを感じました。

インタビュアー:大型船だと乗客の人数が多くなるので、行き届いたサービスは難しいのかなと勝手に思っていましたが、いろんなニーズに向けて丁寧にサービスをされているのですね。

実際、特別なリクエストをするお客様はいる?

杉浦シェフ:多いと思います。そのような多様な文化を理解しながら、常に配慮のある仕組化がなされているのは素晴らしいなと。

クルーズ船のすごいところ!

仕事現場がクルーズ船内… あまり想像がつかない方も多いのではないでしょうか。
杉浦シェフがカルチャーショックを受けたことなどあれば伺ってみたいと思います。

船旅の印象は乗船前と乗船後で変わった?

杉浦シェフ:ゆとりを持った時間を過ごせる、流れている時間の使い方が違うなというところを感じましたね。

例えば、陸路の移動が多くなる通常の旅行より船の中で全て兼ね備えているので退屈しないというか。
旅の目的が観光でもそれまでの時間もエンターテイメントを楽しみながら、有意義な時間を使える場だなと思いましたね。

クルーズ船はメニューを好きなだけ頼みたい放題

杉浦シェフ:船のダイニングにありがちですが、メニューを好きなだけ選べるじゃないですか。
あれ凄いなと思いまして(笑)

インタビュアー:沢山の量が食べられる人にとっては魅力的ですよね。
しかも無料で(クルーズ旅は旅行代金に全て含まれているので)地上のレストランではあり得ないサービスですね(笑)

適正な時間できちんとサーブされる仕組み

杉浦シェフ:何が出るか分からない状態ですが、オーダーをまとめていって、厨房ではそれ対して準備ができています。

レストランの利用客の状況も、デジタルにオーダー通じて確認をとってやっているので、そういうところからもホスピタリティのあるサービスがよくできているなという印象です。

インタビュアー:私もクルーズ旅をする時は好き勝手にメニューを頼んでましたが、いつも何もトラブルなく出されているイメージでした。
オペレーションにそういった秘訣があったのですね!

食を通じて社会問題を解決し、未来社会を豊かにする

杉浦仁志シェフ 代表料理
杉浦仁志シェフ 代表料理

杉浦シェフは、日本サステイナブル・レストラン・協会 プロジェクトアドバイザー・シェフもされていますね。

先ほどもお話したように、クルーズ船は特有のオーダーの仕方で、どうしても食品廃棄ありますよね…。
船でもその取り組み強化が課題であります。

クルーズ船のフードロス問題

杉浦シェフ:大量の廃棄っていうのは正直見受けられているので気になります…。
ただ、クルーズ船の仕事はダイナミックな仕事をするじゃないですか。
フードロスなど、そういったことは逆に改善しやすいところがあるのかなと。

大量の廃棄物が出るので、行き着く街でコンポストに回収してもらったり、焼却するのではなく循環させるとか将来できてくるのではないかと思ったり。

昨今はレストランでもそういったコンポストのマシンが置いているところもあるので、今後、時代の進化と共に船内の中でも取り組みとしてなされていくんじゃないかなと。

サスティナブルに関する当初の感覚は?

杉浦シェフ:サスティナブルの問題に対して集中的な取り組みをしている感覚は、10年程前の当時はまだ正直なかったですね。

ただ、考え方によると、“廃棄ではなく価値” に変えられるところもあると思います。
それを堆肥として売っている企業もありますし、アイデアを作れば、そういった循環をしながらクルーズも楽しめるというところが出てくるのではと思います。

食から生まれるSDGsの観点

サスティナブルや食品ロスに興味を持たれたきっかけは?

杉浦シェフ:最初はSDGsの観点からですね。
というのも、文化的なところの壁が日本にはあると思っていて、その辺をもう少し理解しないと国際社会の中で文化交流しづらいし、食に対しての理解もなかなかできないなと感じた機会がありました。

日本人が持っている宗教的な固定観念の考え方を緩和しないと、グローバル社会の中で日本はどんどん浮いた存在になっていくような…危機感を感じました。

環境問題を解決する一つのソリューションとして、食に対しての改善は世界中でできることだと思い、環境に対しての意識をし始めるようになりましたね。

インタビュアー:国際的な舞台を沢山経験されているからこその視点で素晴らしいです。

杉浦シェフ:幸いにもそういった場を設けさせていただいて、実際にやっていくことによって社会の状況とか把握できる中で、周りの皆さんと当事者意識を持って改善していかないといけないと思います。

何でもそうですが、実体験があまりないと説得力に欠け、おとぎ話のような感じで意識が疎い方も多いのは仕方のないことです。

啓蒙活動を通して思うこと

インタビュアー:当初から皆さんの意識は変わってきましたか?

杉浦シェフ:実際変わってきていると思いますよ。
ヴィーガンの料理教室レストラン・カフェの監修をしていく中で、生の声も聞けました。

統計があって、まだ行動までには繋がっていない人が多いですが、一歩進歩しているという感じです。
食から生まれることも大切だなと思い、そういった気持ちで今活動していますね。

SDGsという言葉を聞いたことありますか?
SDGsに関する取り組みを企業や団体、または個人として行なってますか?

引用:朝日新聞社

朝日新聞社が2021年12月に実施した第8回SDGs認知度調査で、「SDGsという言葉を聞いたことがある」と答えた人が76.3%に達し、過去最高を更新した。
前回調査(45.6%)から約30%増え、社会に急速に浸透している言葉であることがうかがえる結果になった。

その一方で、SDGsの内容については、「少し知っている」が56.2%、「ほとんど知らない」が28.0%。内容の定着にはまだ時間がかかるようだ。また、SDGsに関する取り組みを行っているかを尋ねたところ、「特に取り組むことは考えていない」が47.7%に達した。SDGsの言葉は知っているものの、具体的な事柄への理解が不足しており、自分事として取り組むことへの意識も道半ば、といった印象だ。

第8回SDGs認知度調査

美味しそうだけでなく健康そう、が当たり前に

杉浦シェフ:SDGs関連のサスティナブルというところで「フードロス」もそうなんですが、「健康」という観点でも「食事」ってものすごく大事です。

MSC社にどのような提案を?

杉浦シェフ:船って飽食になるじゃないですか。
その中で自分の中のペースで、健康に繋がる食をさりげなく取れたらいいなと。
そこで「身体のメンテナンス」をちゃんと考えたメニューをMSCクルーズに提案しました。

インタビュアー:発想が面白いですね。
船に乗ってしまえば船の中で提供しているものが全てになるので、今まで全く健康に関心がない方でも、その食事を手に取って新しい視野を広げるきっかけになりそうですね。

杉浦シェフ「美味しそう」っていう情報だけじゃなく、「健康そう」というものと結びつくガイドラインをおくことによって、身体のメンテナンスが気になっていた方に意識的に摂ってもらって、日々のクルーズの中の食事も、ポジティブな方向に変わっていったらいいなと思います。

朝食は健康思考で、メニューに込められた想い

杉浦シェフ:食事としてはシンプルな和食ですが、そのメニューの中に、「こういった考えで作っています」というものを盛り込めたらなと。

今まではダイニングで作ってくださいと言われるのが「人気のメニュー」「定番メニュー」など、少しカロリー高めのしっかり食べられる料理を求められていましたが、それに相殺するような形で「朝食」は健康思考でいこうと決めていました。

インタビュアー:どうしてもクルーズ旅ってついつい欲が出て食べ過ぎてしまうなどで、太るイメージがありますよね。
ダイエットメニューというよりかは、ヘルシーなものがあるというのは嬉しいですね。

杉浦シェフ:そこに身体に対しての労りを与えるものをこれから入れることによって、お客様の充実度も上がっていくのではないでしょうか。

インタビュアー:ロングクルーズとなると何日間も船にいることが続くので、船旅を楽しみながら食を楽しみつつ、地上で生活しているよりも洋上の方が健康になるよっていうプログラムがあれば面白そうですね。

杉浦シェフ:ロングスパンになると、3〜4日目に飽きてくる感じがありますよね。
最初は全部食べたい勢いだったのに(笑)
身体に馴染むようなメニューを求められるのかなと思い、そういったところを追求したいと思います。

杉浦シェフってこんな方!

杉浦仁志シェフ シグネイチャー料理

気さくで穏やかな杉浦シェフ、当初の質問数を超えてたくさんお話ししていただきました。
今後もシェフにご協力いただき、“クルーズ旅を広める活動” を一緒にできたらなと思っています。

仕事以外の船内の過ごし方は?

杉浦シェフ:そこはもう、ゲストの一員として有意義に時間を使わせていただいてましたよ(笑)
外に出てお酒をいただいたり、リラックスしたり。

クルーズ旅の魅力とは

杉浦シェフ:やっぱり「移動が便利」っていうところですかね。
アクセスを跨がずに行ける、降りてからバスに乗ればすぐに観光にも行ける。
時間の使い方がとても優雅で、通常の旅のパッケージとは違うなと思いますね。

インタビュアー:確かに移動が多くて慌ただしい旅のプランもありますが、クルーズ旅は自由きままです。

杉浦シェフ:船主催のツアーを申し込めば、全部バスで移動して、タイムスケジュールもいただいて、ショートトリップの中で街のランドマークに行けるのはいいなと思いますね。

プライベートで行きたい国は?

杉浦シェフ:妻がクロアチアに行ってみたいと言ってまして。

インタビュアー:クロアチアは町全体が世界遺産に認定されていて、クルーズ旅で訪れる価値のある寄港先です!
代表的な寄港地は、ザダルと「アドリア海の真珠」と呼ばれるドブロブニクですね。
日本ではアニメ「魔女の宅急便」の舞台としても有名です。

杉浦シェフ:やっぱりクルーズ旅行は下船してすぐに観光地を楽しめるのはいいですね。
飛行機だと降りてから移動は大変ですが、地上に着いたらそのまま観光に行けるのは魅力的です。
おすすめのクルーズ船はありますか?

インタビュアー:「美食の船」のオーシャニアクルーズはいかがでしょうか?
クルーズのディスティネーションとして、エーゲ海・アドリア海は世界的に人気です。

杉浦シェフ:海を眺めながらシーフードに舌鼓!いいですね〜。
また近い将来、クルーズ旅をできる日が今から楽しみです。

撮影者:izumin

杉浦仁志(ONODERA GROUPエグゼクティブシェフ)

大阪生まれ。2009年渡米。
料理業界のアカデミー賞とされる「ジェームス・ビアード」受賞シェフであるジョアキム・スプリチャル氏のもと、LA・NYCのミシュラン星つきレストランで感性を磨き技術を習得。
2014年から2年連続で、ニューヨーク国連大使公邸で開催された、安倍元総理はじめ世界の要人が集った国連日本代表団レセプションパーティーにて、日本代表シェフを務める。
国内外で培った国際的な食経験を通じ、日本におけるヴィーガン・プラントベース調理の第一人者として活躍。
多数の受賞歴を持つ。
現在「Social Food Gastronomy(ソーシャル・フード・ガストロノミー)」を提唱し、より多角的な視野から社会貢献とイノベーションを国際舞台で展開。
2050年に向けた次世代のシェフモデルとして注目される。 

ONODERA GROUPエグゼクティブシェフ
日本サステイナブル・レストラン・協会 プロジェクトアドバイザー・シェフ
一般社団法人J Vegan協会副会長兼エグゼクティブシェフ
Residence of Hope館林 アドバイザーシェフ
一般社団法人 国際予防医学協会講師

杉浦仁志 シェフ 公式 Chef Hitoshi Sugiura Japanese Vegetarian Vegan Chef Japan official

編集後記

シェフならではの目線で、レストランの仕組みやオペレーション事情など、貴重なお話を伺えました。
洋上のダイニングという特殊な環境のもとで、日々美味しい一皿一皿を提供し続ける、それは船上で働く方々の心配り、努力の上に成り立っているということを改めて感じました。

杉浦シェフが仰った “クルーズ旅行は健康的な食事で楽しんでほしい” という想い。
日々の生活や健康意識を見直したい方にもぴったりで、クルーズ旅に興味を持っている方だけでなく、健康意識を持っている方でも楽しめそうな提案だったので、お話を伺いながらとてもワクワクしました。

船旅の魅力は人それぞれ、色々ありますが、最も多くの方が楽しみにしているのは非日常の中で味わう食ではないでしょうか。
次回クルーズ旅に行く際は、“美味しそうだけでなく健康そう” という観点からも、船旅を楽しみたいなと思いました。

杉浦シェフ、新しい発見と学びをありがとうございました!

 2022年8月25日インタビュー
インタビュアー:ゆりか / フォトグラファー:izumin

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