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こんにちは、藤原暢子です。
20年前の初シルバーシー体験
始めてシルバーシー・クルーズの客船に乗ったのはいつだろう。
1998年に、生まれて初めてのクルーズ(なぜか英国客船で世界半周)をして、その後、「世界には、いろいろな種類の客船がありますよ」と教えられた。
その後約2年間で、集中的に色々な客船に乗り倒した後半だから、2000年前後だったと思う。
もちろん、シルバーシー・クルーズの格はある程度理解していて、「NOと言わない小型高級船に乗る」というのは分かっていた。
巨大で陽気な新造船から、それなりに落ち着いたパナマックスの船、中型の高級船、アジアを中心にめぐる気軽な客船などに乗った後だったので、『シルバー・クラウド』(1万6800トン/乗客定員296人=当時)を港で見た時はかなり小さく感じた。
しかし、中に入ってみると、客室も船内も広々としていたのを覚えている。
ラグジュアリー客船のサービスの先駆け
シルバーシーの船は当時、「クルーズ業界の先駆け」がたくさんあった。
チップやアルコール代がクルーズ代金に含まれる「オールインクルーシブ制」はアルコールがあまり飲めない私でもありがたく、客室の冷蔵庫も好きなお酒やソフトドリンクを飲むと、どんどん無料で補充されていく。
今では珍しくないが、アメニティーもすべてブルガリで、船内には洋上初のブルガリのショップもあった。
食事も2回制などなく、好きな時間に好きなレストランで食べられるし、客室(シルバーシーの場合はスイートと呼ぶ)で、ディナーのコースを1品1品持ってきてもらうこともできるのにも驚いた。
朝食もベランダが広いのでルームサービスをのんびりといただけるのがうれしい。
船内はきらびやかというより、落ち着いていて品がいい。
シアターなども小ぶりで、イベントも多くはないので、自分のペースで船旅が楽しめるという意味で、本当の“贅沢な船旅”とは何かを知ることができた。
私もまだ若く、初めてのシルバーシー。
最初はまだ色んなことを試したいので、どこまで「Noと言わないか」を知りたくて、あえて色んなお願いをしてみた。
寄港地で買ったフカヒレの乾物をダイニングに持っていって、「すみません、これを食べたいんですけど」と言うと、数日後、絶品フカヒレスープを作ってくれ、付け合せに北京ダックまで出してくれて、「参りました!」となった思い出がある。
乗るほどにその深さを知るシルバーシーの船
その後、2万トン客船の「シルバー・ウィスパー」や「シルバー・シャドー」、船体の真ん中を切って船体を伸ばした「シルバー・スピリット」、4万トンになって多彩なダイニングを備えた「シルバー・ミューズ」など、取材もあったかもしれないが、基本的にプライベートで乗るようになった。
仕事で大きめの客船にも乗るが、どうしても寄港地が似てきてしまう。
そういう意味でも小型のシルバーシーは居心地がよい上に、小さく珍しい港に入港できるので、休暇に乗る船の選択肢にいつも挙がってくる。
さらに全室バトラー付きなので、どんどん甘やかされてしまう。
よく「バトラー付きなんて、何を頼めばいいか緊張してしまう」という方がいるが、レストランや寄港地ツアーの予約も頼むほうが楽だし、知り合いになった方を招いて、自室でちょっとしたお茶会というときも、バトラーが全部セッテイングしてくれる。
そんな大げさなことでなくても、寄港地ツアーから帰ってきて、履いていった靴を客室の端に置いておいたら、「土埃がついたようですから、磨いておきましょうね」と申し出てくれる。
それでもプライバシーを守りたい時はバトラーも察して、「サイレント・サービス」というのをしてくれる。
例えば、就寝前に薬を飲む乗客であれば、枕元に水とコップをそっと置いておくといった感じだ。
乗船後の荷解きや下船前のパッキングなども頼めるが、これは私もなんとなく頼みにくい。
だが、話を聞くと、下船前に体調を崩した方が仕方なくパッキングを頼んだら、あまりにも素晴らしかったので、その方はそれ以降、毎回お願いしているという。
極地船や探検船としても先駆け
南極や北極など、今となればブームであるが、シルバーシーは2008年から「シルバー・エクスプローラー」という極地船を就航させている。
ラグジュアリーな極地船のパイオニアだ。
さらに2017年には「シルバー・クラウド」を大改装して耐氷構造の探検船に、2020年には「シルバー・ウインド」も改装して極地への航行可能な船となった。
いつものシルバーシーの極上のサービスや豊富なダイニングの選択肢はそのままに極地への旅が叶う。
ガラパゴスだけを周遊する客船も2013年から開始し、2020年には新造船の「シルバー・オリジン」がガラパゴス諸島のクルーズを引き継いだ。
極地や秘境を訪れるにはその地を知り尽くしたプロたちが乗っている船が大事で、それがシルバーシーなら船上の快適さも保証されている。
豊富な食の選択とアート
「シルバー・ミューズ」に乗った時は今まで乗ったシルバーシーの船から少し趣向が変わった。
たとえば、メインダイニングを設けず、フレンチ、イタリアン、ステーキ、アジアン・フュージョンなど、8つのダイニングを揃えた。
その日の気分で食べたい料理を決められる。
新しく設けられた「アート・カフェ」はモダン・アートに囲まれながら、コーヒーや軽食をつまみながら、本を読んだりできる。
著名な画家のクラシックな絵画が見られるので、私は同社の船を「船上の美術館」と思っていたが、その現代アート版だ。
2021年と2022年にデビューした「シルバー・ムーン」と「シルバー・ドーン」では寄港地での食体験に力を入れている。
ミューズで行った、そのトライアル・クルーズに参加させてもらったが、寄港地ごとに地元の料理研究家やシェフが市場や地元料理を出すお店を案内してくれたり、乗客が習いながら調理に挑戦することもある(船上でデモンストレーションや料理教室体験も)。
地元の人の生活と密接につながる食体験はシルバーシーでの船旅をさらに豊かにしてくれる。
今後も続くシルバーシーのお楽しみ
2023年、2024年にはさらに革新的で環境に配慮した”エボリューション・クラス“のデビューが控えている。
どんな新シルバーシーが誕生するか、楽しみでならない。
またシルバーシーの人気のエリアは、なんと「日本周遊」。
2023年、2024年と春や秋のベストシーズンに配船される船が倍々のペースで増えてくる。
欧米人が多いが我々日本人も気軽に日本の港からシルバーシー体験ができる機会が増えるので、”初シルバーシー”の方もリピーターの方にも朗報だ。
人もクルーも温かい船
1994年にモナコで創立されたシルバーシーは、2018年にロイヤルカリビアンリミテッドと資本提携を行った。
独立系からアメリカ的なラグジュアリー客船になるのかと思いきや、リピーターは根強く、乗客のインターナショナルな雰囲気は変わらない。
「元気だった?」。
乗客が乗船早々、顔見知りのウエイトレスに声をかけたり、前回のクルーズの時の写真を顔見知りのクルーに渡す姿などが見られる。
翌日のディナーに合わせたいワインを選びに旧知のソムリエを誘ってワインセラーでワイン話に花を咲かせたり、お気に入りのバトラーを指名する乗客もいるという。
高級船で富裕層の乗客が多いが、気取りがなく、各所で見知らぬ人と話も弾む(ただカジュアルな服装でもハイブランドのTシャツだったり、質の良いものを来ているのはさすが!)。
船内にサンダルを作る老舗店の職人が乗っている船もあり、色々な素材を自分で選んで、職人の方とあれこれ相談しながら、クルーズ中にオリジナルのサンダルを作ってもらったりと、色んな触れ合いや体験も準備されている。
高級小型客船の会社もいくつかあって、それなりに個性が違う。
シルバーシーのクルーズは落ち着いて数日を過ごしていると、じわじわと、本当の、上質なクルーズ体験が理解できる船だと、私は思っている。
メンバープロフィール
- 長崎生まれ。医療系の出版社から、週刊誌、フッション誌などを経て、2004年よりクルーズ専門誌「CRUISE」(海事プレス社)で約10年間、編集長を務める。現在は同誌プロデューサー&クルーズ・ジャーナリスト。父は元船医、姪は客船の乗組員という海のDNAを持つ一家。偶然乗った人生初のクルーズは英国客船での世界一周(1998年)で、クルーズに魅了される。乗船した客船は25年間で約120隻、訪ねた国は約80カ国。休暇はクルーズと国内外のホテルめぐりの半々。プライベートでは小型のラグジュアリー客船やヨットスタイル客船、リバークルーズで未開の地や街をめぐるのが至極タイム。宝物はクルーズで知り合った人たち。
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